長門市・青海島

詩人 金子みすずのふるさとである長門市の北にある青海島(おおみじま)では,
日本列島がまだいまの場所にはなく,遠くアジア大陸の東のはしにあった時代の大
規模な火砕流をみることができます。

7月13日,県立山口博物館の「ちしつめぐり」に参加しました。あいにくの雨で
じゅうぶんな観察をすることができませんでしたが,いまの火山とはくらべものに
ならない大規模な火山のエネルギーを感じることができました。案内していただい
たのは山口大学理学部の今岡照喜さん,コーディネーターは山口博物館の亀谷 敦
さんでした。

青海島のパンフレットで
す(青海島観光汽船株式会社)。「海上アルプス」というキャッチフレーズがつけ
られています。

1億年前の日本列島を復元(もとの位置やようすにかえすこと)した地図です。古
地理図(こちりず)とよばれています。図のくわしい説明ははぶきますが,
赤い太
線でひいた海と陸の境界
に注目してください。青海島は,大陸のいちぶですが,九
州の南側,本州の東側,北海道の西側はまだ陸地になっていません。

これから,青海島で観察したことを紹介します。当日配布された 『今岡照喜 著
「地質めぐり 青海島の白亜紀火山-深成作用」
』を参考にさせていただきまし
た。


青海大橋の下の海岸。地層全体に,しま模様がみえますね。このしま模様は,火山
灰や土砂がたまった面をしめしています。このような岩石のあつまりを地層(ちそ
う)といいます。写っている人の「かさのとって(柄)」のところで,岩石の種類
がちがっています。下の地層は,噴火によってこなごなにこわされたマグマのかけ
ら(凝灰岩=ぎょうかいがん),上の地層は湖にたまった砂や泥,火山灰などから
できています。


同じ場所の断層(だんそう)の写真です。断層というのは地層にわれ目がはいり,
その両側で地層がずれることをいいます。右側は凝灰岩でしま模様がみえています
ね。左側のしま模様がみえない部分は,地層がずれた(断層ができたとき)にこな
ごなにこわされた岩石です。地震は,断層ができるときにおこりますから,この地
層のずれができたときには,大きな地震がおこったのでしょうね。


大泊。2種類の地層がみえます。下の方の黒っぽい地層と上の方の白っぽい地層で
す。地層のさかいは,右上から左下にむかっており,草がはえています。下の地層
は,湖にたまった砂や細かい泥,そして石のかけら(石のかけらを礫(レキ)とい
いそれがかたまったものを礫岩といいます)からできています。上の地層は結晶を
たくさんふくんだ火山灰でできています。火山灰は,火砕流(かさいりゅう)とし
てはこばれてきました。

火砕流というのは高温のマグマのかけらとガスがいっしょになって,非常に速い速
度(時速100kmをこえることもあります)で地表(あるいは海上)を流れるもの
です。みなさんは,雲仙普賢岳の火砕流をおぼえていますか。43人の方がなくな
りましたね。でも,雲仙普賢岳の火砕流はとても規模のちいしものでした。青海島
の火砕流は,雲仙普賢岳のものとくらべものにならないほど大きなものでした。雲
仙普賢岳の火砕流は,山頂の火口から流れ出した溶岩がこわれて斜面をころげおち
てできましたが,青梅島の火砕流は,長くのびた地面の割れめから,こなごなに
なった高温のマグマとガスが,空たかくまでふきあげられ,それが落ちてくる力
(エネルギー)で遠くまで流れていったのではないでしょうか。


船越。火砕流となってながれてきたガラスの多い凝灰岩。

凝灰岩の断面(山口県の岩石図鑑。横幅は8センチメーター)。黒い細長くのびた
ものが見えますね。これは,マグマのかけらが空中にふきあげられたときに,ガス
がぬけてできた「穴のおおいスカスカの岩石」で「軽石=かるいし」とよばれるも
のが,つぶされてできたものです。軽石のあいだの白い部分は,こなごなになった
こまかいマグマのかけら=火山灰です。

なぜ軽石がつぶされたか,というと,火砕流は速度がおそくなると,だんだん地面
にたまって厚くなります。そうすると下の火山灰は,上にのっている火山灰の重さ
がかかります。こまかい火山灰は,「ぎゅうぎゅうづめ」になりますが,軽石はお
しつぶされてペッチャンコになってしまうのです。また,大規模な火砕流がたまっ
てできた厚い層(火山灰層=かたまると凝灰岩という名前になります)は,地面に
接している下の部分と,空気に接している上の部分は冷やされますが,まん中には
熱がたまり,火山灰や軽石が少しずつとけて,おたがいがくっついてしまいます。
このような岩石を,
溶結凝灰岩(ようけつぎょうかがん)といいます。最後には,
火山灰や軽石がとけてしまって溶岩とかわらなくなってしまいます。みなさんが見
学にいったことのある阿蘇火山の火口付近の地面は,火山灰がとけて,もういちど
固まった岩石なのです。


十六羅漢(じゅうろくらかん)とよばれている景色です(山口県の岩石図鑑)。羅
漢とは,「阿羅漢(あらかん)」を略したことばで,尊敬(そんけい)・供養(く
よう=おそなえをすること)をうける価値があるという意味だそうです。そのこと
から仏教の修行の最高段階やそこに到達した人(おぼうさん)を(阿)羅漢とよん
でいます。ここには,16人(?)のすばらしいお坊さんがいらっしゃるのです
ね。ところで,写真左側の水平線に近いところには,背の高い羅漢さん,その右側
には背の低い羅漢さんがいます。背の低い羅漢さんは,凝灰岩,背の高い羅漢さん
は,凝灰岩の間をとおりぬけてきたマグマがかたまった岩石(岩脈=がんみゃく)
からできています。ここの岩脈は,流紋岩です。凝灰岩よりも岩脈のほうが固いの
で,雨,浪,風にけずられる(風化といいます)量がすくないので,背が高いので
す。そういう目で,景色をみるとおもしろいと思います。

さいごに今岡さんがつくった「青海島のおいたち」を,しょうかいしたいと思いま
す。

エピソード1:約1億年前,とつぜん大地におおきなわれ目ができ,大噴火がおこ
りました。こなごなにこわされ高温のマグマのかけらやガスが空高く噴き上げらま
した。マグマのかけらとガスは,高温のまま大地にふりそそぎ火砕流となって遠く
まで流れていきました。噴火の前の川や谷,低い山は火砕流にうめられてたいらな
大地ができました。噴火がおさまると,大雨がふりはじめ,低いところに大きな湖
ができました。長い間に,岩石はけずられ,土砂になって,新しくできた川によっ
て湖にはこばれ,厚い地層ができました。

エピソード2:マグマだまりのなかには,新しいマグマがたまってきました。マグ
マだまりの壁のちかくでは,マグマが冷やされ結晶ができはじめました。マグマだ
まりの内側は,まだ熱いままでした。マグマだまりの圧力がだんだん高くなり,ま
わりの岩石がその力を押さえられなくなり,割れ目ができてそこからマグマが噴き
だしました。噴きだしたマグマは,火砕流となって地面をうめつくしました。最初
に噴き出したマグマは,マグマだまりの外側にあった結晶をたくさんふくんだもの
でした。その後,マグマだまりの内部の結晶の少ない部分が噴火し,急に冷やされ
たためにたくさんのガラスができました。

エピソード3:マグマだまりのなかたまっていたガスはなくなり,残されたマグマ
が,ときどき割れ目をつたって流れだし,溶岩や岩脈になりました。

エピソード4:マグマだまりにのこっているマグマの量が少なくなったたために,
マグマだまりの中に空洞(すきま)ができました。そのために,マグマだまりをさ
さえることができなくなり,天井をつくっていた岩石がマグマだまりの中に落ちて
きました。そのはずみでのこっていたマグマ上の方に押しだされ,上昇していきま
した。一部は,同じマグマだまりから噴き出した火砕流がつくった地層にまでたど
りつきました。


長門峡(ちょうもんきょう)(山口県の岩石図鑑)。山口県には,青海島以外にも
1億年前の火砕流がひろがっています。代表的なところは,阿東町の長門峡です。

また,1億年前には日本だけではなく世界中で青海島とおなじような大規模なマグ
マの活動がおこりました。地球が元気な時代だったのですね。