活火山のきまりが新しくなり,日本の活火山の数は108になりました。そのなか
で,阿武火山群のなかまは,長崎県の福江火山群と静岡県の伊豆東部火山群の2つ
しかありません。そこで,福江火山群について簡単にご紹介します。

福江火山群は,長崎県五島列島の福江島の北西部の岐宿(きしゅく)火山,三井楽
(みいらく)火山,南東部の福江火山,富江(とみえ(火山から構成されていま
す。福江火山群では,まず岐宿火山で94〜68万年前にアルカリ玄武岩の活動がは
じまり,その後,約30万年前に三井楽火山,福江火山でもアルカリ玄武岩が活動
しました(永尾ほか,2002)。もっとも新しい噴火は,福江火山の火の岳溶岩の
直下から黒曜石の剥離片が発見されたことや,縄文晩期の水の窪遺跡が降下スコリ
ア層の下から出土したことから2000〜3000年前と考えられるます(寺井,
1989)。なお,福江火山の新期の活動は約9万年前からはじまりました(永尾ほ
か,2002)。

永尾ほか(2002)日本地質学会第109年学術大会講演要旨,296ページ.(pdf形式)

阿武火山群と福江火山群のちがい:福江火山群は,玄武岩の溶岩流とスコリア丘
からなる単成火山のあつまりで,日本でも世界でもふつうに見られる火山群です。
阿武火山群は,玄武岩の溶岩流とスコリア丘,そして安山岩の溶岩台地の集まりで
す。安山岩は,地下約30kmにある岩石が玄武岩の熱で融かされてできた流紋岩マ
グマと玄武岩マグマが混ざってできたものです。このような複雑なプロセスででき
たマグマが噴火してできた阿武火山群は,ひじょうにめずらしいものです。伊豆東
部火山群では,玄武岩マグマと流紋岩マグマが独立に噴火して火山群をつくってい
ます。】

福江火山群が活火山に指定されたのは,福江市大津町の縄文晩期の水の窪遺跡が,
鬼岳火山の噴火でふりつもった火山灰がスコリアの下から発見され,鬼岳の噴火は
縄文時代後期より新しいということがわかったこと(福江市教育委員会,1976)
と,現在,長崎県教育センターに勤務されている寺井邦久さんの研究(1989)
で,福江市長手の火の岳火山から流れた溶岩流のすぐ下から縄文時代の黒曜石の剥
離片が発見され,このことから火の岳の噴火は少なくとも2000〜3000年前まで
活動していたと考えられるからです。

わたしたちは(永尾ほか,2002)は,鬼岳火山群の噴火の歴史をくわしく調べる
ために,玄武岩を採集しK-Ar年代測定法で年代をはかってもらいました。しかし,
富江火山や福江火山のいくつかのものは,この方法で年代をはかるには若すぎまし
た。

私たちが得ることができた年代は以下のとおりです。@岐宿,岐宿火山 68万年
,A京ノ岳,三井楽火山 30万年前,B天保,富江火山 若すぎてはかれな
かった
,C女亀,富江火山 若すぎてはかれなかった,D増田,増田溶岩 31万
年前
,E鬼岳溶岩,鬼岳火山 5±4万年前,F大浜溶岩,鬼岳火山 2±3万年
,G城岳溶岩,城岳火山 9万年前,H長手溶岩,火ノ岳火山 41万年前,I箕
岳溶岩,箕岳火山 
若すぎてはかれなかった,J臼岳溶岩,臼岳火山 若すぎては
かれなかった
,K大浜溶岩,鬼岳火山 5±4万年前

上の3Dの地形図と下の玄武岩の分布をくらべてみてください。

寺井(1989)によると福江火山の新期の活動は以下のようなステージに区分され
ています。【1】流動性の高いパホイホイ溶岩を噴出した,【2】溶岩を大規模に
流出し,比高30m±の溶岩台地を形成した,【3】小規模な溶岩流を多数噴出し
た,【4】噴石丘の形成とともに溶岩湖ができた,【5】火口壁を越えて小規模な
溶岩流が溢出した。なお,富江火山も新期の福江火山と同じ時期に活動した可能性
があります。

福江火山の箕岳と臼岳

鬼岳火山・スコリア丘の火口

富江火山のスコリア丘と溶岩流